2024年7月6日土曜日

移民はサッカーを強くする?弱くする?ドイツとイングランドで明暗

■2017/09/04 移民はサッカーを弱くする? イングランド苦戦が移民のせいに
■2017/09/04 逆に移民はサッカーを強くする? ドイツはそもそも優勝した
■2019/03/23  ロシア大会ではドイツでエジル問題発生、移民が弱くした例?




■2017/09/04 移民はサッカーを弱くする? イングランド苦戦が移民のせいに

 サッカーの代表選手と帰化選手というのは、いろいろと言われます。今回は特に移民に関するものです。

 優勝経験もあるサッカーの母国イングランドは、ブラジルワールドカップのグループリーグで姿を消しました。後にリーグを突破することになるイタリアとの試合でも、イングランドは1-2で敗れました。この試合はスコア以上にイングランドがうまく行っていない感じが伝わってきたゲームでした。

 今はページが消されてしまいましたが、ヤフーのこの試合の特設ページで「移民問題で疲弊してる国はサッカーも弱くなる」と発言している方がいました。ヨーロッパは移民でトラブルを起こしている国が多く、イギリスもその一つです。

 ただ、移民といえば、大会で優勝したドイツも移民の存在が目立った国です。むしろ移民が優勝に貢献したという見方すらあります。

-----引用 ここから-----
ドイツ、サッカー移民が活躍 「多様な文化で代表成長」 - 2014ワールドカップ:朝日新聞デジタル 河野正樹、吉田純哉 2014年7月15日00時36分

決勝の先発メンバーのうち、クローゼはポーランドからの移民で、エジルはトルコ、ボアテングはガーナにルーツを持つ。ケガで直前に先発から外れたケディラはチュニジア系だ。エジルとボアテングは今大会で全7試合に先発し、チームの主軸を担い、大会を支えた。
http://www.asahi.com/articles/ASG7G4H2HG7GUHBI00S.html
-----引用 ここまで-----

 ドイツも国としては移民が問題になっていないわけではありません。

-----引用 ここから-----
松田雅央の時事日想:トルコ系移民が増えて、どんな問題が起きているのか
松田雅央,Business Media 誠 2010年12月15日 08時07分 更新

 このところ、ドイツで移民規制の議論が活発化している。ドイツ統計局の2009年度データによれば「外国人」「ドイツで生まれた外国人」「国籍取得者」「帰還移住者」「それらの子ども」といった、いわゆる“移民の背景を持つ人”の割合は19%に達する。日本ではあまり知られていないことだが、ドイツは国民の5人に1人が移民に由来する移民国家である。

 移民規制の議論が活発化する背景を一言で表現すれば、それは増え過ぎた移民と社会との不整合だ。(中略)

 これだけトルコ系移民が増えたのはドイツ政府がとった「ゲスト労働者政策」のためだ。第二次世界大戦後の労働力不足を補うためトルコから労働者(主に単純労働)を招き入れ、呼び寄せられた家族と定住化したのが今のトルコ系移民である。昔は大歓迎で招かれたのに不景気な時代になると「移民がドイツ人の職を奪う」と邪魔者扱いされ、さらには規制の対象になるのだから、彼らの立場からすればこんな理不尽な話はない。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1012/15/news033.html
-----引用 ここまで-----



■2017/09/04 逆に移民はサッカーを強くする? ドイツはそもそも優勝した 

 ただ、サッカー界では移民を受け入れたようです。以下、再び朝日新聞から。

-----引用 ここから-----
 多くの移民やその子どもたちが代表選手に名を連ねるようになった背景には、2000年以降の選手育成の改革がある。改革の一環で、各クラブは移民の子どもたちを積極的に受け入れるようになった。例えば、決勝点を挙げたゲッツェを生み出したドイツ1部ドルトムントの育成組織は15%以上がトルコ系やアフリカ系などの移民の子どもたちだという。(中略)

 異なる文化的背景、身体的特徴を備えた移民の子どもたちが入ることで、ドイツ持ち前の粘り強さに、これまでになかった個性が加わった。エジルは直線的になりがちなドイツの攻撃にテンポの違うリズムや間を作り、ボアテングはしなやかな体を利用した守備でアルゼンチンFWメッシを抑えきった。ドイツリーグのクリスチャン・ザイフェルト社長は「多様な文化が混ざって代表が成長した」と見る。
-----引用 ここまで-----

 おもしろいのは、ドイツは東西ドイツ統一も経験しているということです。Jリーグでもプレーした西ドイツの名選手"ピエール・リトバルスキーさん(54)は、当時を「両足でしっかり蹴れる、個人技術の高い東ドイツの選手が多く加わり、レベルが上がった」と振り返"ったそうです。
 たとえば、"東ドイツ出身のDFザマーは、主力として96年の欧州選手権優勝に貢献し"ました。

 ただ、移民はもとより、民族的な問題でうまく行かないチームというのもごまんとあります。たとえば、今回は「今までにないほどチームがまとまった」と選手が語っていたオランダは、「最高の選手は揃っているんだけど、仲がね」と必ずと言ってよいほどチーム内の不和のことを言われてきました。

 結局はチーム次第…という身も蓋もない話かもしれませんね。 


■2019/03/23  ロシア大会ではドイツでエジル問題発生、移民が弱くした例?

 前回の最後にポロッと書いた、「結局はチーム次第であり、移民の多さは関係ない」が正解かもしれません。おもしろいことに、ブラジル大会とロシア大会では移民の多い国の結果はガラリと変わりました。
  まず、優勝したフランスは前回は極端に良くも悪くもなく。今回はもちろん優勝ですから大成功であり、移民の多さがよく言及されていました。

 一方、対戦相手に恵まれたとはいえ、4位だったイギリスは前回悪かったときに移民のせいだと言われていた国。 イングランドはEU離脱問題でいっそう国内情勢が悪化していて、なおかつ全く期待されていなかった代表なのに大躍進。移民のせい説が怪しいことを示しています。
 そして、前回大会優勝のドイツですが、まさかのグループリーグ敗退。前回良かったオランダにいたっては、予選で負けて本大会に来れませんでした。

 このうちドイツですが、一応移民問題は関係。主力のエジルなどが政治的な発言で、ドイツ国民から大バッシングを受けており、敗退の原因の一つとはされていました。とはいえ、前述の通り、全く無関係な例が多いですし、ドイツは前回むしろ最高成績だったチーム。
 したがって、悪い・良いともに、関係あると言えるような法則性はないと考えるべきでしょう。 政治的な主張に利用するようなことは、やめてくださいね。